藤ヶ谷ドン・ジュアンのざっくりあらすじと感想

ちょっと前ですが、藤ヶ谷さん主演の「ドン・ジュアン」を見てきました。
せっかくなので、記録用にざっくりしたあらすじと感想を雑多に書きます。が、1回しか見ていないので、だいぶ曖昧な部分もあります。ご容赦ください。ネタバレ注意。


オープニングは、ドン・ジュアンのことを知る人々による歌唱。
上口耕平さん演じる親友ドン・カルロ、めちゃくちゃかっこいいし、いい声でした。
鶴見慎吾さん、春野寿美礼さん、恒松祐里さんの歌もとてもステキで、こんなにしっかりと周りのキャストを固められては、藤ヶ谷さんのプレッシャー半端ないだろうな、と冒頭から思ってしまうほど。

その後、地面が割れて後光が差すように現れるドン・ジュアン。オーラですべてを飲み込むような壮大な登場やばい。
しかし、それからのドン・ジュアンは一向にしゃべらず。あれ、この舞台主役しゃべらないやつ…?と不安になりました笑

そしてしゃべらないまま、ストーリーが進行していって、ドン・ジュアンは騎士団長の娘をたぶらかし、娘を汚されて激怒した騎士団長と決闘します。


ここでびっくりしたのが、フェンシングの殺陣でした。
これまで藤ヶ谷さんの殺陣をちゃんと見たことがなかったので、私の藤ヶ谷さんの殺陣イメージはキスブサのSPで見た殺陣(時代劇風のマイノスケを助けるやつ)。当時はあんまり上手じゃないなと勝手ながら思っていたのですが、今回披露されていた決闘シーンのフェンシングの殺陣がかなりうまくて驚きました。
流れるような素早さと、人を斬る力強さのメリハリがお見事。
そして、戦いながら騎士団長の娘を蹂躙する様子を見せつけ、不敵な笑みを浮かべる。
これは悪い男だ…。
結果的にに騎士団長は殺され、死んだ騎士団長がドン・ジュアンに愛の呪いをかける…という導入。

それからもドン・ジュアンは女性をとっかえひっかえ。多数の女性と絡むシーンは、生々しさはまったくなく、個人的には美しい!!という一言でした。

たくさんの女性とセクシーなシーン多め、という前評判があったのですが、藤ヶ谷さんの振る舞いは高貴な印象がかなり強かった。彼自身はもちろんセクシーで色気があるのだけれども、絡みシーン自体には下衆に女を抱いては捨て、という印象はなく。息を吸うように女と絡んだりキスはしたりするものの、そこに気持ちは全然ないのだなあ、という感じがして、冷徹なドン・ジュアン像がそこにはありました。

そんななか、ドン・カルロドン・ジュアンの妻と名乗るエルヴィラ(元修道女)を連れてくる。もともと修道女だった彼女は、ドン・ジュアンの言葉を信じてセビリアにやってきたのだが、ドン・ジュアンはそんなもの覚えてないとまったく意にも介さず。

「俺の名は」というナンバーでやっと、ドン・ジュアンが歌唱。(ここまでほぼしゃべらない)
ここでは、普段の藤ヶ谷さんの歌い方や声量とは違っていて、キスマイのファンであればこそ、かなり度肝を抜かれました。
低めの音は少し言葉が明瞭じゃなくて、伸びしろがある感じはしましたが、初ミュージカルでこのレベルまで持っていくのにどれだけ努力されたんだ、と。
声量も予想以上にあって、堂々と歌うその姿から目が離せなくなりました。

場面は変わり、兵士たちが訓練している様子。
平間さんのラファエルをはじめ、統率のとれた兵士たちの群舞がカッコよかったです。

平間さんは一度「髑髏城の七人」の霧丸役で拝見したことがありまして、かなり俊敏で身体能力高めな方だと思っていたのですが、今回は歌にダンスに、そんだけ動いても全然歌声ぶれなくてすごいな⁉と感嘆しかりでした。

そして、ヒロインのマリア登場。彫刻家のマリアは亡くなった騎士団長の石像を掘る仕事を任されて嬉しそう。しかし、婚約者のラファエルは出征から帰ってきたら、仕事をやめてほしいと彼女に伝える。

ラファエルはやりたいなら続けてもいいけど、とは言いつつ、やめてほしいんだろうな、という気持ちが端々から漏れていて、マリアとのすれ違いの演出と脚本が見事だな、と思いました。ほんの一瞬しかないのに、ふたりの関係性がよくわかるシーンでした。

一方、エルヴィラはドン・カルロの勧めでドン・ジュアンの父親ドン・ルイ・テノリオに会い、ドン・ジュアンを説得するように頼む。 しかし、父親に呼ばれたドン・ジュアンはかなり不機嫌。

私がミラー・ツインズが好きすぎたせいかもしれませんが、父親に会いに行くのに苛立っているドン・ジュアンは少し子どもっぽい一面がミラツイの勇吾を思い出させました。

結局、父親との話し合いは決別し、酒場にやってくるドン・ジュアンと彼を心配するドン・カルロ
酒場での「悪の華」「快楽」「アンダルシアの美女」は力強いナンバーで、ダンスはやはり圧巻。藤ヶ谷さんが情熱的なフラメンコを踊っている姿は様になりすぎてすごかったし、こんなに歌と踊りを立て続けにやってく体力すごい…とも。途中踊りながら酒をかっ食らう振りで水分補給してるっぽいのを見て、そりゃ疲れるわ!と思いました。

あと、ドン・ジュアンのために「望むならば」とストリップを始めたエルヴィラをかばうドン・カルロ様がイケメン…! ドン・ジュアンはほんとに興味なさそうに冷たい態度なのに、ドン・カルロ様のジェントルマンっぷりといったら。
見ながら何度も、ドン・カルロでいいじゃん、と思ったからね。
そんなこんなでアンダルシアの美女もモノにしたらやっぱりすぐ捨てるドン・ジュアン

一方でちょいちょいドン・ジュアンを追いかけてくる騎士団長の亡霊が怖すぎる件。亡霊のタップは本当に最高で、シーンの切り替えがタップだけで持つ技術や演出のすごさを感じましたが、いかんせん亡霊が怖い。笑

その後、亡霊に導かれ、マリアと出会うドン・ジュアンドン・ジュアンはマリアの仕事を認めていて、すれ違うラファエルとは対照的。さらにラファエルの部隊は出征先で壊滅したようで(実際は後半でラファエルは生存していたことがわかる)、婚約者がいる設定でもそこまで置いてかれることもなく、マリアがドン・ジュアンに惹かれていく過程がよくわかりました。

そして、ドン・ジュアンがマリアを想い歌う「エメ」は、私がこのミュージカルで一番印象に残った素晴らしいナンバーでした。

藤ヶ谷さんといえば、綺麗な透き通るような高音が得意な印象だったのですが、J-POPの高音の歌声とはまったく違う、のびやかな高音が最高でした。

二幕からは、幸せそうなドン・ジュアンとマリアのふたり。
ドン・ジュアンも、これまでの冷酷ぶりとは打って変わって彼女だけを大切にする甘甘っぷり。
ベッドで寝ている上裸のドン・ジュアンが美しすぎて、本当に天使みたいでした…!

ふたりのデュエット「変わる」とか、ディズニープリンスとプリンセスみたいだったし、とにかく夢みたいに美しいドン・ジュアン。マリアはかわいい。

しかし、そんな幸せは長くは続かず、エルヴィラが帰って来たラファエルにマリアとドン・ジュアンの関係を密告。ラファエルとドン・ジュアンは決闘することになる。

マリアはすでに心はドン・ジュアンにあると告げるものの、ラファエルへの嫉妬心を抱いたドン・ジュアンは決闘へ向かう。愛の呪いから逃れられないドン・ジュアンがとにかく切ない。このままだって幸せでいられるはずなのに、決闘に行くのを止められない。

最終的には、人間として生きるには己の死しかない、と決闘中のラファエルの刃に向かい、その命を終えるドン・ジュアン。舞い散る薔薇とその死は、やはり切なくも美しかったです。

ドン・ジュアンが亡くなった後、失意に倒れるラファエルをドン・ルイパパがそっと寄り添っていた様子から、息子を失った父と婚約者を失ってしまった青年の頼りなさを感じました。

そんなこんなでドン・ジュアンの死で物語は幕を閉じ、キャストさんのご挨拶。あっという間という印象と、歌と踊りめちゃめちゃ多かったなぁ、と、かなりの満足感がありました。

それから、最後にギャップがすごかったのが、カーテンコール。

今までのドン・ジュアンはなりを潜め、急にキラキラ笑顔で可愛くお手振りするアイドル藤ヶ谷さんモードに。それを見ながら、ああこの人アイドルだったんだよなあ、と現実にかえる感覚を覚えました。
楽しそうに演者のみなさんが踊る姿を見て、これぞミュージカルだなあ、と思いました。


総括としては、このキャスティング神では、ということです。

本当に実力派の方々がまわりを固めていらして、ミュージカルとしてのクオリティも素晴らしいし、そこに応えようと食らいつく藤ヶ谷くんの努力の跡が見えました。ひとつずつ、でも着実に力をつけていく藤ヶ谷くんから、これからも目が離せそうにありません。

名古屋公演での、ますますのパワーアップと、宝塚ファンの友達と鑑賞会を開きたいので、円盤化に期待!